第10回 学び続けるチームをつくる

ここまで「学習する組織のつくり方」について、9回にわたって考えてきました。

「学習する組織」と聞くと、少し難しそうに感じるかもしれません。

特別な研修が必要なのではないか。
新しい制度をつくらなければならないのではないか。
専門的な知識が必要なのではないか。

でも、このシリーズで考えてきたのは、もっと日常的なことです。

仕事をする。
振り返る。
気づいたことを話す。
失敗から学ぶ。
そして、次の行動を少し変える。

その繰り返しです。

最終回では、これまでの内容を振り返りながら、学び続けるチームをつくるために大切なことを整理してみたいと思います。

■ 学習する組織とは「学び続けるチーム」

第1回で、学習する組織を、

「学び続けるチーム」

と表現しました。

ここでいう「学び」は、研修を受けたり、本を読んだりすることだけではありません。

日々の仕事の中で、

「なぜ、うまくいったのだろう?」

「なぜ、今回はうまくいかなかったのだろう?」

「次はどうしたらいいだろう?」

と考える。

そして、その気づきを次の仕事に活かしていく。

つまり、

経験して終わるのではなく、経験から学び、次に変えていく。

それが、学習する組織の基本です。


■ 学びが止まるのは、能力がないからではない

チームの学びが止まってしまうのは、メンバーの能力や意欲が低いからとは限りません。

忙しくて振り返る時間がない。

失敗を話しにくい。

いつも同じ人だけが意見を言う。

気づいたことが共有されない。

せっかくの経験が記録されず、忘れられてしまう。

こうしたことが重なると、チームの中にはたくさんの経験があるのに、それが学びとして残りません。

だからこそリーダーには、メンバーに「もっと勉強しよう」と言うだけではなく、学びが生まれやすい環境をつくることが求められます。


■ まずは「振り返る」ことから始める

学びの出発点になるのが、振り返りです。

このシリーズでは「リフレクション」という言葉も紹介しました。

リフレクションとは、経験を振り返り、そこから学びや気づきを見つけることです。

難しい方法は必要ありません。

「うまくいったことは?」

「課題だったことは?」

「次にやることは?」

この3つを考えるだけでも、経験は学びに変わります。

会議の最後の5分でもかまいません。

仕事が終わったときの短い会話でもかまいません。

大切なのは、忙しいからこそ、少しだけ立ち止まることです。


■ 安心して話せるチームをつくる

振り返りの時間をつくっても、本音を話せなければ学びは深まりません。

そこで大切になるのが、心理的安全性です。

心理的安全性とは、安心して自分の意見や疑問、失敗を話せる状態のことです。

「こんなことを言ったら笑われるかもしれない」

「失敗を話したら怒られるかもしれない」

そんな不安が強いチームでは、大切な情報が表に出てきません。

リーダーができることは、意外と小さなことです。

最後まで話を聴く。

いきなり否定しない。

質問を歓迎する。

失敗を報告してくれたら、まず受け止める。

こうした日々の積み重ねが、学びを話せる土台をつくります。


■ 答えだけでなく「問い」を増やす

学び続けるチームには、問いがあります。

「もっとよくするには?」

「ほかの方法はないだろうか?」

「今回の経験から何を学べる?」

リーダーがすぐに答えを教えるのではなく、メンバーと一緒に考える。

すると、メンバー自身が考える機会が増えていきます。

良いリーダーとは、いつも正しい答えを持っている人とは限りません。

チームが考え続けるための問いを投げかけられる人。

それも、これからのリーダーに必要な役割ではないでしょうか。


■ 個人の学びを、チームの学びにする

一人のメンバーが何かに気づいても、その人の中だけにとどまっていれば、チーム全体の学びにはなりません。

だから、

記録する。
言葉にする。
共有する。

ということが大切です。

「今日、こんなことに気づいた」

「このやり方がうまくいった」

「これは失敗したので、次はこうしたい」

そんな小さな学びをチームで共有する。

そして、

「それはほかの仕事にも使えそうだね」

「次は私も試してみよう」

と誰かが受け取る。

一人の経験が、チームの知恵に変わっていく。

これも、学習する組織の大切な特徴です。


■ 失敗を「次をよくする材料」にする

第9回では、失敗について考えました。

失敗は、できれば避けたいものです。

しかし、起きてしまった失敗を責めるだけで終わらせても、チームは成長しません。

「誰が悪かった?」

ではなく、

「何が起きた?」

「今回から何を学べる?」

「次は何を変える?」

と考えてみる。

そして、次の行動を少し変える。

失敗を歓迎する必要はありません。

でも、起きてしまった失敗は、次をよくするための材料にすることができます。

成功からも、失敗からも学ぶ。

それが、学び続けるチームです。


■ リーダー自身が「学ぶ人」になる

ここまで、リーダーができることをいろいろ紹介してきました。

しかし、一番大切なのは、

リーダー自身が学び続けること

かもしれません。

「分からないから教えてほしい」

「今回は私の判断もよくなかった」

「やってみたけれど、うまくいかなかった」

「次はこう変えてみようと思う」

そんなことをリーダーが自然に言える。

すると、メンバーも学びや失敗を話しやすくなります。

リーダーが「教える人」であるだけでなく、メンバーと一緒に「学ぶ人」になる。

その姿勢が、チームの文化を少しずつつくっていきます。


■ 学び続けるチームのチェックリスト

最後に、これまでの内容を簡単なチェックリストにしてみます。

あなたのチームでは、いくつ当てはまるでしょうか。

□ 仕事のあとに振り返る時間がある
□ 「分からない」と言える
□ メンバーが自分の意見を話せる
□ 失敗を隠さず共有できる
□ リーダーがすぐに答えを教えすぎない
□ 「なぜ?」「次は?」という問いがある
□ 日々の気づきを記録している
□ 一人の学びをチームで共有している
□ 成功だけでなく失敗からも学んでいる
□ リーダー自身も学び続けている

全部にチェックが入る必要はありません。

一つでも、

「ここは変えてみよう」

と思うところがあれば、そこから始めればいいのです。


■ まとめ

学習する組織は、一日ではできません。

新しい制度をつくったからといって、すぐに生まれるものでもありません。

会議の最後に5分だけ振り返ってみる。

メンバーの失敗を責める前に、話を聴いてみる。

「あなたはどう思う?」と質問してみる。

今日の気づきを一つ共有してみる。

そんな小さな行動の積み重ねが、少しずつチームを変えていきます。

強いチームとは、最初から何でもうまくできるチームではありません。

経験し、振り返り、話し合い、また試してみる。

そして、昨日より少しだけよくなっていく。

そんな**「学び続けるチーム」**をつくること。

それが、このシリーズで考えてきた「学習する組織」なのです。


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