ビジョンは、組織やチームが持つ目的や存在意義を明確にするものです。しかし、メンバーの想いが反映されていないビジョンは、実行に移すのが難しくなります。そのため、個々の想いを融合し、共有しやすい「シェアードビジョン」を作ることが重要です。シェアードビジョンは、メンバーの主体的な関与を促し、実行性を高め、成果につながる指針となります。
ビジョンとは
ビジョンとは、一言で言えば「メンバーの想いの総意」です。従来の中長期ビジョンは、現状分析や課題抽出をもとに経営層が決定し、それを現場に浸透させる形が一般的でした。しかし、こうしたトップダウン型のビジョンは、現場のメンバーにとっては「押し付けられたもの」となりやすく、内発的な動機にはつながりにくいのが現実です。
シェアードビジョンとビジョンシェアリングの違い
シェアードビジョン(共有されたビジョン)
シェアードビジョンとは、メンバーの想いの総意から生まれるボトムアップ型のビジョンです。作成には時間がかかりますが、その過程で対話が生まれ、「関係の質」が向上します。このプロセスこそが、ダニエル・キム氏の「組織の成功循環モデル」をポジティブなサイクルで回す鍵となります。

ビジョンシェアリング(共有されるビジョン)
一方で、多くの組織が採用しているのは、経営層や専門部署が作成し、それを組織に浸透させる「ビジョンシェアリング」です。このトップダウン型のアプローチでは、メンバーはビジョンに共感するのではなく、単に行動を求められることが多く、組織の成功循環モデルが「バッドサイクル」に陥るリスクがあります。

シェアードビジョンの作成
Good Team Relationsでは、ワークショップを通じてシェアードビジョンの作成を支援します。ワークショップでは、メンバーが主体的に対話し、自らの想いを共有する場を設けます。これにより、「わたしの想い」が組織の一部となり、「想いの総意」が組織の軸となることで、各自の責任ある行動につながります。
ビジョンとウェルビーイング(PERMA)
近年、ビジョンを考える上で重要視されているのが「ウェルビーイング」です。心理学者マーティン・セリグマンが提唱する幸福の5要素「PERMA」は、ビジョンの実行力を高める上で不可欠な要素となります。
Positive Emotion(ポジティブな感情)
楽しさ、喜び、愛、希望など、人間が感じるポジティブな感情を指します。
ポジティブな感情を持つことで、人間は心身ともに健康的であることがわかっています。
Engagement(エンゲージメント)
夢中になれる活動を行うことで、集中力が高まります。
仕事や趣味、スポーツなど、自分にとって意味のある活動に夢中になることです。
Relationship(関係性)
人間は社交的な動物であり、他者との関係を築くことで幸福を感じることができます。
関係性は、親しい友人、家族、同僚など、様々な形で表れます。
Meaning(意味)
自分にとって意味のあるものを追求することで、人間は幸福を感じることができます。
自分がやりたいことや、人生において価値あるものを作り出すことが、意味を持つことにつながります。
Accomplishment(成果)
自分自身の能力を発揮し、達成感を得ることで幸福を感じることができます。
成果は、自分が設定した目標を達成することです。自分の能力を発揮することで得られます。
これらの要素を取り入れたシェアードビジョンは、単なる理想ではなく、実行可能な未来の指針となります
まとめ
組織のビジョンには、「シェアードビジョン」と「ビジョンシェアリング」の2つのスタイルがあります。より実行性が高く、組織の成長を促すのは、メンバーの想いを融合させた「シェアードビジョン」です。さらに、「PERMA」の視点を加えることで、ビジョンは単なるスローガンではなく、未来の職場を創るための実践的な指針となります。

メンバーの総意として組織・チームの目指す姿を言語化します
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