第3回 メンバーの考えを引き出す質問

「どう思う?」
リーダーがそう聞いても、
「特にありません」
「分かりません」
と返ってくる。
会議で、
「何か意見はありますか?」
と聞いても、誰も手を挙げない。
そんな経験はないでしょうか。
「せっかく質問しているのに、どうして答えてくれないんだろう」
そう思うかもしれません。
でも、メンバーに考えがないとは限りません。
もしかすると、考えを引き出すための入口が見つからないだけなのかもしれません。
今回は、メンバーの中にある考えを引き出す質問について考えてみます。
■ 「どう思う?」は意外と難しい
「どう思う?」
とてもシンプルな質問です。
相手の考えを自由に聞けるので、よい質問のように見えます。
でも、聞かれた側からすると、意外と難しいことがあります。
何について答えればいいのか。
どこまで話せばいいのか。
正しい答えが求められているのか。
質問の範囲が広すぎて、どこから考えればいいのか分からないのです。
そこで、少し質問を具体的にしてみます。
「この案のいいところは、どこだと思う?」
「気になるところはある?」
「自分がお客様だったら、どう感じる?」
こう聞かれると、考える入口ができます。
質問の範囲を少し絞ることで、相手は考えやすくなるのです。
■ いきなり「答え」を求めない
メンバーから相談を受けたとします。
「この仕事、どう進めればいいでしょうか?」
そんなとき、
「じゃあ、あなたはどうしたらいいと思う?」
と聞く。
第1回でも紹介した質問です。
ただ、経験の少ないメンバーにとっては、これでも難しいことがあります。
まだ答えをつくるための材料が足りないからです。
そんなときは、一つ前に戻ってみます。
「今、どんなことが分かっている?」
「どこまで進んでいる?」
「一番困っているのはどこ?」
まず、今の状況を整理してもらう。
すると、話しているうちに、
「もしかしたら、ここを確認すればいいのかもしれません」
と、自分で次の一歩に気づくことがあります。
答えを聞く前に、考えるための材料を整理する。
これも、考えを引き出す質問の大切な役割です。
■ 「正解」を探していると、意見は出にくい
メンバーがなかなか答えない理由の一つに、
「リーダーが求めている正解を当てなければ」
という気持ちがあります。
特に、リーダーがいつもすぐに答えを示しているチームでは、
「どうせリーダーの中には答えがある」
と思われているかもしれません。
そこで、
「正解じゃなくていいよ。今の時点でどう思う?」
「思いつくことでいいので、聞かせて」
と伝えてみます。
これだけで、答えるハードルが少し下がります。
リーダーが求めている答えを当てる場ではなく、一緒に考える場だと伝えることが大切です。
■ 二つから選んでもらうのも質問
自由に答えるのが難しそうなら、選択肢を示す方法もあります。
例えば、
「今は、スピードを優先するのと、もう少し確認してから進めるのと、どちらがいいと思う?」
と聞いてみる。
すると、
「今回は確認したほうがいいと思います」
と答えやすくなります。
そこで、
「どうしてそう思ったの?」
と続ける。
選ぶところから始めて、少しずつ考えを深めていくわけです。
「自由に考えて」と言うことだけが、相手の自主性を尊重することではありません。
考えやすい足場をつくることも、リーダーの役割です。
■ 沈黙を怖がらない
質問をしたあと、相手が黙ってしまうことがあります。
数秒の沈黙。
この時間が気まずくて、
「つまり、こういうことでしょ?」
とリーダーが話し始めてしまう。
でも、相手は何も考えていないとは限りません。
頭の中で、
「どう言えばいいだろう」
「自分はどう思っているんだろう」
と考えているのかもしれません。
そんなときは、少し待ってみます。
質問する。
待つ。
聴く。
この「待つ」が、意外と大切です。
沈黙は、何も起きていない時間ではありません。考えている時間かもしれないのです。
■ 出てきた考えを、すぐに評価しない
ようやくメンバーが、
「私はこう思います」
と話してくれた。
その直後に、
「いや、それは違うよ」
と言われたら、どうでしょう。
次からは、なかなか意見を言えなくなります。
もちろん、間違っていることをそのままにする必要はありません。
でも、まずは、
「なるほど」
「そう考えたんだね」
「もう少し聞かせて」
と受け止めてみる。
そのうえで、
「ほかの見方はありそう?」
「こんな場合はどうだろう?」
と質問を続ける。
考えを引き出すことと、考えを評価することを、少し分けてみる。
それだけでも、対話は続きやすくなります。
■ 質問は「答えを取り出す道具」ではない
メンバーの考えを引き出すというと、
「うまく質問して、答えを言わせる」
というイメージを持つかもしれません。
でも、質問は相手から答えを取り出すための道具ではありません。
話しながら、
「自分はこんなことを考えていたんだ」
と本人が気づくことがあります。
最初は、
「分かりません」
と言っていた人が、質問に答えているうちに、
「私はこうしたいのかもしれません」
と話し始めることもあります。
質問には、まだ言葉になっていない考えを、一緒に見つけていく力があります。
■ 明日から使える3つの質問
今回は、メンバーが「分かりません」と答えたときにも使いやすい3つです。
「今、分かっていることは何?」
いきなり答えを求めず、まず状況を整理するための質問です。
「一番気になっているのは、どこ?」
考える範囲を絞り、相手が話し始める入口をつくります。
「正解じゃなくていいとしたら、今はどう思う?」
「正しいことを言わなければ」という不安を少し下げる質問です。
質問したら、すぐに次の言葉を重ねず、少し待ってみてください。
その数秒の中で、相手の考えが動き始めるかもしれません。
■ まとめ
メンバーから意見が出ないと、
「自分で考えてほしい」
と思うことがあります。
でも、「考えて」と言うだけで、人が考えられるとは限りません。
何について考えるのか。
どこから考えればいいのか。
安心して話していいのか。
その入口をつくるのも、リーダーの役割です。
質問する。
少し待つ。
出てきた言葉を聴く。
そして、また質問する。
その繰り返しによって、メンバーの中にある考えが少しずつ言葉になっていきます。
いい質問は、答えを引き出すだけではありません。
相手が自分で考えることを助けます。
リーダーが答える時間を少し減らし、メンバーが考える時間を少し増やす。
その小さな変化が、自分で考え、自分で動けるチームにつながっていくのではないでしょうか。
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