生きることとしてのダイヤローグ バフチン対話思想のエッセンス
桑野 隆 (著)/岩波書店

こんなリーダーにおすすめ
・メンバーの主体性を引き出したいリーダー
「正解を教える」よりも、「一緒に考える」関係をつくりたい人
・教育者・キャリア支援者
相手を評価するより、可能性を引き出したい人
・「答えを持つリーダー」から卒業したい人
AI時代だからこそ、一人で答えを出すのではなく、複数の視点から新しい意味を生み出したい人
ざっくり目次
はじめに
Ⅰ 対話的人間
1 「わたしはひとりで生きている」という幻想
2 ひとは永遠に未完であり、決定づけられない
3 ポリフォニー――自立した人格どうしの対等な対話
4 気をゆるめることなくむすびつきながらも、距離を保つ
5 応答がないことほど、おそろしいことはない
Ⅱ 内なる対話
6 モノローグが対話的なこともある
7 意識は対話の過程で生まれる
8 真理も対話のなかから生まれる
9 他者がいて、わたしがいる
10 相互が変化し豊饒化する闘争
Ⅲ 相互作用のなかのことば
11 言外の意味
12 言語のなかでは、さまざまなことばが対話をしている
補 沈黙
おわりに
内容
内容
本書は、20世紀ロシアの思想家ミハイル・バフチンの「対話」思想を、第一人者である桑野隆氏がわかりやすく解説した入門書です。
教育や精神医療、組織づくりなど多くの分野で注目されるバフチンの対話論を、「複数の対等な意識」「内的対話」「創造的理解」「心に染み入る言葉」などの重要な概念を通して丁寧に読み解きます。対話とは単なる会話ではなく、相手を決めつけず、互いに応答し合いながら新しい意味を生み出す営みであることが、本書を通して理解できます。これまで難解とされてきたバフチン思想の中でも、とりわけ「対話」のエッセンスに焦点を当て、豊富な原典を紹介しながら平易な言葉で解説している点が大きな特徴です。
対話を学びたい人はもちろん、教育者、リーダー、ファシリテーター、組織開発に携わる人にとって、多くの示唆を与えてくれる一冊です。
心に残ったフレーズ
46ページ13行目
たしかに、そういわれてみれば、話し手のほうも、一方的に知識や情報を伝えるのではなく、相違なる考えや思いの人びととのこうしたあらたな相互作用を期待しているからこそ、話しかけていることがあります。こうした状態は理想的なケースでしかないといわれそうですが、バフチンによれば、そもそも〈理解〉というのは本来対話的なものとしてしかありえませんでした。
バフチンは、〈理解〉(〈了解〉)と〈説明〉の違いを重視しています。〈説明〉は基本的には一方通行であるのにたいして(たとえば公的機関などが開催する「◯◯説明会」などによく見られるケース)、〈理解〉においてはむしろ応答側が優位に立っていることに、バフチンは注目しています。なぜなら、「言葉にとって(したがってまた人間にとって)応答がないことほど、おそろしいことはない」からです(5.339)。反対意見がでるよりももっとこわいのは、応答そのものすらないことなのです。そのとき、〈説明〉に終始する側は、応答するにあたいする〈人格〉とすらみなされていないのですから。

