第1回 答えるリーダーから、質問するリーダーへ

メンバーから相談されたとき、

「それなら、こうしたほうがいいよ」

と、すぐに答えていませんか。

リーダーになると、「答えなければ」と思ってしまうことがあります。

メンバーが困っていたら解決策を示す。
会議では方向性を示す。
問題が起きたら判断する。

もちろん、リーダーが答えを示さなければならない場面はあります。

でも、本当にいつも答える必要があるのでしょうか。

今回から始まる「チームを変える質問力」では、答えることより、質問することに少し目を向けてみたいと思います。

■ なぜ、すぐに答えてしまうのか

メンバーから、

「どうしたらいいでしょうか?」

と聞かれたとします。

経験のあるリーダーなら、

「こうすればいい」

と答えが浮かぶかもしれません。

そして、その答えを教える。

一見すると、とても親切です。

しかし、これが繰り返されると、

「分からなければリーダーに聞けばいい」

という関係ができてしまうことがあります。

リーダーはますます忙しくなり、メンバーは自分で考える機会を失っていきます。

答えることが、必ずしも相手の成長につながるとは限らないのです。


■ 答える前に、一つ質問してみる

では、どうすればよいのでしょうか。

難しく考える必要はありません。

すぐに答える代わりに、一つ質問してみます。

「あなたはどうしたらいいと思う?」

これだけです。

すると相手は、

「私はこう考えているのですが……」

と話し始めるかもしれません。

そこから、

「なぜそう考えたの?」

「ほかに方法はありそう?」

と質問を重ねていく。

すると、いつの間にかメンバー自身が答えを見つけていることがあります。

質問には、相手の中にある考えを引き出す力があります。


■ 質問は「考える時間」をつくる

良い質問をされたとき、私たちは少し立ち止まります。

「どうだろう?」

「自分はどう考えているんだろう?」

この時間が大切です。

リーダーが答えを与えれば、問題は早く解決するかもしれません。

しかし、質問をすると、メンバー自身が考える時間が生まれます。

そして、自分で考えて出した答えは、誰かから与えられた答えとは少し違います。

そこには、

「自分で決めた」

という感覚があります。

その積み重ねが、自分で考えて動けるメンバーを育てていきます。


■ 質問することは、放任することではない

ここで気をつけたいことがあります。

「質問すればいいのなら、もう答えなくていい」

ということではありません。

経験が少ないメンバーに、何でも

「あなたはどう思う?」

と返していたら、困ってしまいます。

必要な知識は教える。
判断が必要な場面では判断する。
緊急時には明確に指示する。

そのうえで、

「ここは本人に考えてもらったほうがいい」

という場面では質問する。

「教える」と「質問する」を使い分けることが大切です。


■ 質問力とは「たくさん質問する力」ではない

質問力というと、

「どんな質問をすればいいのか」

というテクニックに目が向きがちです。

もちろん、質問の仕方も大切です。

しかし、それ以上に重要なのは、質問した後です。

質問する。
そして、聴く。待つ。

相手がすぐに答えられなくても、リーダーが先回りして話さない。

少しの沈黙を待ってみる。

相手の言葉を最後まで聴いてみる。

質問力とは、質問をたくさんする力ではありません。

相手が考えるための時間と場をつくる力でもあるのです。


■ リーダーがすべての答えを持つ時代ではない

仕事を取り巻く環境は、どんどん変化しています。

AIを使えば、これまで時間をかけて調べていた情報も、短時間で手に入るようになりました。

そんな時代に、リーダー一人がすべての答えを持つことは難しくなっています。

だからこそ、

「私はこう思う」

だけではなく、

「みんなはどう思う?」

と問いかける。

メンバーそれぞれの経験や考えを引き出し、チームで答えを探していく。

これからのリーダーには、そんな役割もますます求められるのではないでしょうか。


■ 明日から使える3つの質問

まずは、この3つから始めてみてください。

「あなたはどうしたらいいと思う?」

相手の考えを引き出す、最もシンプルな質問です。

「なぜ、そう思ったの?」

考えの背景を知ることで、対話が深まります。

「ほかに方法はありそう?」

一つの答えで終わらせず、視野を広げる質問です。

すべてを使う必要はありません。

いつもならすぐに答えている場面で、一つ質問してみる。

そこから始めれば十分です。


■ まとめ

リーダーは、答えを持っている人。

私たちは、そんなリーダー像をどこかで持っているのかもしれません。

でも、メンバーの力を引き出すためには、答えるだけではなく、問いかけることも必要です。

質問する。
聴く。
待つ。
そして、相手が考える。

リーダーが答えを少し手放すことで、メンバーが考える余白が生まれます。

答えるリーダーから、質問するリーダーへ。

その小さな変化が、チームを変える第一歩になるのではないでしょうか。


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