問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する
安藤昭子/ディスカヴァー・トゥエンティワン
こんなリーダーにおすすめ
・正解のない時代にどう答えを出すか悩んでいる
・情報が多すぎて何を選べばよいかわからない
・本質を探求したい
ざっくり目次
はじめに なぜ「問い」を「問う」のか
第1章 「問い」の土壌をほぐす
「私」から自由になるーー内面の準備
インターフェイスを柔らかくーー接面の準備
縁側が必要だーー境界の準備
第2章 「問い」のタネを集める
見方が変われば、世界が変わるーー意味の発見
情報は多面的ーー視点の切り替え
偶然を必然にーー異質の取り込み
第3章 「問い」を発芽させる
見えない壁に穴をあけるーー未知との遭遇
無数の世界に誘われるーー触発装置としての書物
リンキングネットワークの拡張へーー関係の発見
第4章 「問い」が結像する
アンレーンの探索ーー席あの再解釈
他にありえたかもしれない世界ーー内発する問い
仮説で突破するーー新たな文脈へ
第5章 「内発する問い」が世界を動かす
「問う」とはつまり何をしていることなのか
世界像が変容するーーベイトソンの「学習Ⅲ」へ
暴走する世界の中で
おわりに 「問う人」として
内容
問いはどのようにして生まれるのか」がテーマの一冊。
物事を考える際の最初は「問い」から始まる。この問うという行為を自ら自覚的に行うことができれば、様々なアイデアを生み出せる。また、新しい物事を発見することができる。
本書では、問いが生まれ出るプロセスを以下の4つのプロセスに整理し、その中で、どのようにすれば問う力を身につけられるのかが書かれています。
「問い」の土壌をほぐす→「問い」のタネを集める→「問い」を発芽させる→「問い」が結像する
子供の頃には当たり前に持っていた好奇心を取り戻し、思考をめぐらせるために必要な内容が書かれており、自分の視野を広げたり、新しく物事を考えるために役に立ちます。
本書は、これらの問いの発生に関するメカニズムについて、 編集工学の視点で探究する一冊です。
心に残ったフレーズ
24ページ13行目
問う力を育む「生きた土壌」を手に入れて、その力を保つには、何から手を付ければいいだろう。日頃意識しない領域であるだけに難しいが、まずは「私」という強固な枠組みをゆるませる必要がある。というのも、考える主体としての「私」は、常に何かの目的にさらされていて、無駄を省きたがる。「私」の想像力の幅を狭めているのは、他でもない「私」であることが多い。
ふと湧いた好奇心やちょっとした違和感、取るに足らない好みや妙にひっかかる記憶など、合理性のもとでは捨てられてしまいかねない雑多な思考のかけらを伸び伸びとさせてやることが、想像力の土壌には大事なのだ。
そうした微かなゆらぎは私たちの内側で常に起こっているはずなのだけれど、学校や職場や家庭で何らかの役割に徹するうちに、社会的文脈の膜に覆われて見えなくなってしまう。整合性のとれた一貫した自己として社会を生きる中で、自分の内側にある複雑さや意外性が隠されてしまうのだ。
「私」を柔らかくほぐし、ゆるませ、外気を入れ、雑多なセンサーが動く状態にしておくことだ。想像力における「啓蟄」は、何にでもなれる柔らかな「私」に気がついたときに、ふいに訪れる。「私」はもともと、「たくさんの私」なのだということを、思い出しておこう。