第7回:組織開発の進め方②:小さな実験で始めよう

― 大きく変える前に、小さく試す勇気 ―

組織開発と聞くと、「全社的な改革」「大がかりなプロジェクト」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。ですが、実際に組織の変化を生み出すときに効果的なのは、小さな実験から始めることです。

たとえば、「会議の目的を毎回共有するようにしたらどうなるか?」「上司が最後に話す順番に変えてみたら?」といった日常業務の一部に変化を加えるだけでも、組織に良い風が吹き始めることがあります。

全体改革より、まずは小さなチャレンジから

なぜ、小さな実験から始めるべきなのでしょうか?
それは、以下のような理由があるからです。
全体を一気に変えるのはリスクも大きく、合意形成も難しい
一部での成功体験が、他メンバーの心理的安全性や納得感を高める
失敗してもダメージが少なく、すぐに修正・再挑戦できる
組織は、急激な変化に抵抗を示すことが自然です。そのため、まずは自分のチームや自分の仕事から変えてみるというスタンスが、結果として大きな変化につながります。

「PDCA」と「OODA」の違いとは?

小さな実験を進めるうえで意識しておきたいのが、思考と行動のスピード感です。

よく知られているPDCA(Plan → Do → Check → Act)は、計画を立ててから動き始めるプロセスです。一方、OODA(Observe → Orient → Decide → Act)は、観察しながら動きを調整していく柔軟なアプローチです。

観点PDCAOODA
アプローチ計画重視状況重視
スタートPlanから始まるObserveから始まる
特徴安定的に回す変化に即応する

小さな実験には、OODAのような素早く回しながら考えるスタイルが向いています。計画を完璧にしてから動くよりも、まずやってみて、そこから考える。そんな姿勢が組織の柔軟性を高めていきます。

成功・失敗から学ぶ文化をつくる

小さな実験を「一過性のチャレンジ」で終わらせないためには、その結果から何を学ぶかが重要です。

  • 何がうまくいったか?
  • なぜうまくいったのか?
  • うまくいかなかったとしたら、どこに要因があったか?

こうした問いを、関係者と一緒に振り返る時間をつくりましょう。
特に、失敗を責めるのではなく、「意味ある学び」に変えていくことが、組織の文化を育てます。

この姿勢は、第5回記事でも取り上げた「メタ認知」とつながります。
行動した結果をただ評価するだけでなく、「なぜそうなったのか?」を一段高い視点から見つめることが、次のチャレンジにつながります。

小さな実験アイデア集

以下の実験は、すべて「一部の場面で短期間だけ試せる」ものばかりです。うまくいけば継続し、合わなければ見直す。それくらいの軽さと柔軟さで始めるのがポイントです。

【会議の改善】

実験内容目的・効果
会議冒頭に「今日の目的」を一言で共有する集中力を高め、ズレを減らす
会議の最後に「今日の一言感想」を1人ずつ発言ふり返りの習慣づけ/空気の可視化
発言順を「上司は最後」と決める若手や静かなメンバーの声を引き出す
タイムキーパーとホワイトボード係を固定せず持ち回りにする役割の分散と参加意識の向上

【チームの関係性づくり】

実験内容目的・効果
毎週のチームMTGで「ありがとう一言タイム」感謝文化の醸成・心理的安全性の向上
週1回の雑談10分(オンライン・オフライン問わず)縦横の関係づくり/本音が出やすくなる
Slackやチャットに「#ほめる専用チャンネル」開設ポジティブな情報が可視化される

【ふりかえり・内省の習慣】

実験内容目的・効果
毎週1回、個人で「よかったこと・困ったこと」をメモする時間をとる(5分)メタ認知を育てる/学びの蓄積
チームで月1回「小さなふりかえりMTG」実施(30分)PDCA/OODAを回す土台づくり

【業務改善】

実験内容目的・効果
タスクの優先順位を毎朝5分、チームで共有情報の見える化と共通認識の形成
「やらないことリスト」を作ってみる不要な業務の削減/目的の明確化
ルーティン業務を1つ、別メンバーにやってもらう属人化の回避と相互理解の促進

実験を進めるポイント

  • 「やってみたい」人が主導する
  • 期間を決める(例:2週間だけ試す)
  • 結果をみんなでふり返る
  • 成功も失敗も「学び」として共有する

最後に

組織開発を前に進めるコツは、「大きなことを考えて、小さく始める」ことです。

変えたいことがあるなら、まずは自分の行動を小さく変えてみることから始めましょう。
そしてその変化が何をもたらしたのか、周囲と対話しながら確かめていく。
その積み重ねが、やがて組織全体の動きを変えていきます。

組織開発に魔法のような「正解」はありません。
だからこそ、小さな実験を通じて自分たちに合った方法を見つけていくことが大切です。

「まずやってみよう」――この小さな一歩こそが、組織を変える大きな推進力になります。

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