第1回 組織開発ってなんだろう?
〜変化の時代に、自分と組織を育てるという選択〜

突然ですが、あなたのチームにはこんな悩みはありませんか?
「目の前の業務で精一杯。チームがどこに向かっているのかわからない」
「会議をしても、本音が出てこない」
「なんとなく息苦しさを感じているけれど、原因がつかめない」
これらの課題に対して「もっと仕組みを変えよう」「KPIを設定しよう」といったアプローチもありますが、人と人の関係性や、チームの在り方そのものに目を向けるのが「組織開発(Organization Development)」です。
この連載では、組織開発の専門家でなくても実践できる基本的な考え方や手法を、全10〜15回にわたって紹介していきます。対象は、これから組織開発に関わることになった組織開発初心者の方。現場で働く一人ひとりが、組織をより良くするために「自分にできること」を見つけられるように構成しています。
理論だけでなく、現場で実践できるヒントや問いかけも交えながら、「自分と組織がともに育つ」感覚を大切にしていきます。
組織開発とは「人を通じて組織を育てる」営み
組織開発とは、「人やチームの関係性・行動・価値観に働きかけて、組織全体の力を高めていくプロセス」です。
特に特徴的なのは、次の3つの視点です。
1.関係性に注目する
単に制度や仕組みを変えるのではなく、「人と人の関係性」や「チームの対話」に焦点を当てます。
2.内側から変わることを重視する
トップダウンの命令よりも、現場メンバーの気づきと学びを大切にします。
3.変化はプロセスとともに起きる
一度の施策で終わらず、「対話」「実践」「振り返り」を繰り返すことで変化を育てていきます。
組織開発は、特別な人がするものではない
「組織開発って人事やコンサルがやることでしょ?」と思うかもしれません。
でも本当は、どんな役職・立場の人でも、日常の中で実践できるのが組織開発の良さです。たとえば、こんな行動も立派な組織開発です。
- ミーティングの目的を一言で伝えてから始める
- あるメンバーの意見を肯定しながら、他の人にも意見を求める
- 終了後に「今日の話し合い、どうだった?」と振り返りを促す
つまり、ちょっとした「関係性へのまなざし」が、チームを変えていく一歩になります。
組織開発を進めると、なぜ「自分自身」も成長できるのか?
組織開発は、人やチームを変えようとする営みですが、実はその過程で自分自身の在り方や考え方にも変化が生まれます。
- 「なぜこの行動が起きているのか?」と問い直す
- 「相手はどう感じているのだろう?」と想像して関わる
- 「この会話の目的はなんだろう?」と立ち止まる
こうした姿勢は、まさにこちらの記事でもご紹介した「メタ認知の力」に通じます。
組織を見つめなおすことは、自分自身の思考・感情・行動を見つめなおすことにもつながるのです。
組織開発の第一歩は、「気づくこと」から
最初の一歩は、「自分たちの現状に気づくこと」です。
決して大がかりな制度改革から始める必要はありません。
- 「なんとなく、この会議、目的がぼんやりしてるかも」
- 「最近、メンバーとの雑談が減ってる気がするな」
- 「このプロジェクト、誰が何に困ってるか見えてないかも」
そんな小さな気づきが、変化の入口になります。
次回は、今なぜ組織開発が注目されているのか?という背景と社会の変化を取り上げます。
「成果を出すこと」と「人がいきいきと働くこと」を両立するヒントを探っていきます。
▼関連記事
目的を深掘りする力:メタ化がもたらす4つの利点
すり合わせを実践するためのステップ:チーム力を高めるポイント