「決断」よりも「問い」を立てるリーダーへ

「リーダーとは、常に決断を下す存在である」。
多くの人がそう信じています。しかし、変化のスピードが速く、正解が見えにくい今の時代、リーダーが“すべてを決める存在”であり続けることは、もはや現実的ではありません。
むしろ今必要なのは、決断力よりも“問いを立て、チームと共に考える力”。
決めることよりも、考えるプロセスを共有できるリーダーが、チームを成長させるのです。
■ 昔の常識:「決断するリーダー」が尊ばれた時代
日本の組織文化には長く、「上が決める」「リーダーが責任を負う」という構造が根付いてきました。
意思決定の速さや明確さが、強いリーダーの象徴でもありました。
しかし現代のチームが直面する課題は、単純な「正解」が存在しません。
リーダーが一人で決めようとすると、むしろリスクが高まり、メンバーの主体性が奪われることさえあります。
■ 決めすぎるリーダーがチームを弱くする
新任リーダーのAさんの例です。
会議では常に「こうしよう」とリーダーが決定。
短期的には効率的ですが、メンバーからは「どうせリーダーが決めるなら意見しても意味がない」と不満が。
決断ばかりのリーダーは、チームの自発性を損なうことがあります。
■ リーダーの新しい役割は「問いを立てること」
現代のリーダーは、“決める”より“問いを立てる”ことに力を注ぎます。
- 「私たちが本当に大切にしたいことは何か?」
- 「この方法で最善だと言える根拠はあるか?」
- 「誰の声がまだ聞こえていないか?」
こうした問いが、メンバーの思考を動かし、チーム内の対話を活性化します。
問いを通じてメンバーが主体的に考えることで、リーダーがすべてを決めなくても、チームとして納得解に到達できます。
■ 決断よりも「合意形成」を育てる
リーダーの役割は、決断することよりも**「チームが納得して前に進める環境を整えること」**です。
- 情報を共有する
- 視点を交わす
- 違いを受けとめる
- チーム全員で合意をつくる
このプロセスを通じて、チームは自律的に動き、決断の質も高まります。
■ リーダーが決断しない勇気
決めない勇気は、優柔不断ではありません。
- もう少し意見を聞く
- 今は考える時間が必要
- チーム全員で課題を検討する
こうした“余白”を作る姿勢が、チームの創造性と信頼を高めます。
■ まとめ
「リーダーは決断するもの」という思い込みを手放すと、チームはリーダーの指示待ちから解放されます。
決断とは、リーダーが一人で下す“命令”ではなく、チームが共にたどり着く“納得の瞬間”なのです。

