第6回:組織開発の進め方:現状を知る(診断と観察)

組織開発を進めるうえで、まず大切になるのは「今の組織の状態を正しく知る」ことです。
現状を知る方法としては、観察・ヒアリング・アンケートなどいくつかの手法がありますが、単なる数字や表面的な声だけで判断しないことが重要です。
今回は、初心者の方でも始めやすい現状診断の考え方と具体的なコツを紹介します。
観察・ヒアリング・アンケートの基本
観察:会議や普段のやり取りを注意深く見る。発言者の偏り、沈黙の時間、リアクションなども観察のヒントです。
ヒアリング:メンバーに1対1や小グループで話を聞きます。問いかけは「どう感じましたか?」「最近どんなことに困っていますか?」などオープンクエスチョンを使うのがポイント。
アンケート:無記名にすることで本音を集めやすくなります。定量的(例:5段階評価)+自由記述欄を設けると、数値とストーリーの両面が見えます。
数字だけでなく「語り」から探る
アンケートで得られる数値も大切ですが、それだけでは組織の深い部分は見えてきません。
大事なのは具体的な「語り」やエピソードを聞き出すことです。
具体的な実施例
- 5〜6人の小グループで「最近うれしかったこと・困っていること」を順番に語る
- ファシリテーターはメモをとりながら「それはなぜ?」「具体的には?」と問いかけて深掘り
- 終了後、全員で共通するテーマや背景を整理してみる
こうした「語り」の場をつくるときは、
- まずリーダー自身が率直に話してみせる
- 評価や否定をしない
- 小さいグループで安心感をつくる
といった工夫が効果的です。
これは以前紹介したメタ認知の記事(目的を深掘りする力:メタ化がもたらす4つの利点)でも触れたように、「表に出ている声の背景を考える」力を育むことにもつながります。
バイアスに注意しながら観るコツ
診断や観察では、自分の思い込み(バイアス)が入りがちです。
- 声が大きい人の意見=全体の意見と思い込む
- 「うちのチームはこうだろう」という先入観で話を解釈してしまう
こうした偏りを減らすためには、
- 複数の手法(観察+ヒアリング+アンケート)を使う
- 他のメンバーとも感想や気づきをシェアする
といった工夫が役立ちます。
これはすり合わせの考え方(すり合わせを実践するためのステップ:チーム力を高めるポイント)とも共通していて、「一人の見方に偏らないように事実を照らし合わせる」ことが大切です。
おわりに
組織開発の最初の一歩は「現状を知る」こと。
数字だけでなく「語り」やエピソードにも耳を傾け、バイアスに気をつけながら複数の視点を持つことが、次のステップの土台になります。

