人を伸ばす力
エドワード・L・デシ+リチャード・フラスト 桜井茂男(監訳)/新曜社
こんなリーダーにおすすめ
・若手への指導がわからない
・スタッフのモチベーションを上げたい
・チームを意欲的な集団にしたい
ざっくり目次
日本語版への序
第1章 権威と不服従
第Ⅰ部 自律性と有能感がなぜ大切なのか
第2章 金だけが目的さ・・・報酬と疎外についての初期の実験
第3章 自律を求めて
第4章 内発的動機づけと外発的動機づけ・・・それぞれがもたらすもの
第5章 有能感をもって世界とかかわる
第Ⅱ部 人との絆がもつ役割
第6章 発達の内なる力
第7章 社会の一員になるとき
第8章 社会のなかの自己
第9章 病める社会のなかで
第Ⅲ部 どうしたらうまくいくか
第10章 いかに自律を促進するか
第11章 健康な行動を促進する
第12章 統制されても自律的に生きる
第Ⅳ部 この本でいいたかったこと
第13章 自由の意味
訳者あとがき
内容
人の意欲と能力を伸ばす力は何か? アメとムチというのが従来の常識ですが、近年の心理学の研究はこの常識を否定し、課題に自発的にとりくむ「内発的動機づけ」と、自分が自分の行動の主人公となる「自律性」の重要性を実証しています。
では内発的動機づけと自律性はどうしたら伸びるか、その成長をたすける方法は何か。説得的な事例に富み、研究成果への柔軟で深い洞察、現代社会の鋭敏な観察から書かれた本書は、自己の成長を願う人々はもとより、成長をたすける立場にある管理者にとって、人間観がひっくりかえされるような読書経験となるでしょう。
心に残ったフレーズ
70ページ6行目
・・・クック先生は読書することをあたたかく励ましてくれた。彼女は、本の貸し出し方法について説明した。それは図書館でするやり方に似ていた。ただし、その説明の際、誘因をほんの少し付け加えた。一年間で一番たくさん本を読んだ人にはご褒美をあげますよ、と。そのとき、クック先生は何がご褒美なのかは言わなかった。一年後は遠い先のようにも思えたが、私はご褒美がなんであれそれが欲しいと思った。また、ご褒美をもらうことを通して、先生にほめてもらいたいとも思った。
そのうち私には、ご褒美は実際にたくさんの本を読んだ子どもに与えられるのではなく、多くの本を借り出した子どもに与えられるのだということがなぜかわかってきた。そこで、私は決心して、次々と貸し出しのサインをすることにせいを出した。実際に何冊読んだかは思い出せないが、読んだ本の数が貸し出しのサインの数より少ないことは間違いなかった。ついに学年の終わりに、私はご褒美としてクレイヨラ・クレヨンの大きな箱を手に入れた。今考えてみると、悲しい思い出である。クレヨンは立派だったが、もうとっくになくしてしまった。したかもしれない読書も、私のものとなったかもしれない発見も、その機会を逃してしまった。どれだけのことを私は失ったのか、知る由もない。